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3・11 震災文庫を読む(10)

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宮城県仙台市 クリエイティブ・コモンズ

東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。

被災地から問う心の傷、風評の壁
河北新報社 論説委員 寺島英(ひで)弥

■「3・11と心の災害」
蟻塚亮二、須藤康宏/著
大月書店 刊

■「東日本大震災4年目の記録 風評の厚き壁を前に」
寺島英弥/著
明石書店 刊

福島第1原発事故が傷つけたのは、福島県浜通りの被災地の集落や土、森の環境だけではありません。人の心もそうです。
睡眠障害、さまざまな身体症状、幻覚やパニック…。相馬市で被災者の精神的ケア支援の診療所長を務める蟻塚医師は、来院者たちの悩みに、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)ではないか」と気付きました。
原発事故の衝撃、家族や古里と引き離された悲しみ、異郷での長い避難生活のストレスが心の傷となって癒えないまま、被災者を苦しめているのです。
目に見えぬ心の災害を報告する本書は、克服へ「共に悲しめる絆」の大切さを訴えます。
「風評は一時(いっとき)の『風』でなく、被災地の復興を妨げる『壁』になった」。東日本大震災、福島第1原発事故の被災地を取材してきた著者の実感でした。
福島、宮城の水産業、農業などの現場で人々が苦闘してきたのは、実態のない風評のために販路を絶たれ、安値を付けられ、あるいは市場を失い、復興への希望をそがれる現実でした。
その壁は海の向こうにもあります。石巻のホヤ養殖の漁師らは、大消費地だった韓国の「放射能の不安」を理由にした輸入禁止措置が解けぬまま、ゼロからの再出発を模索しています。
風評は人の心に根差すものでもあり、ゆえに難題なのです。

※紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます

問合せ:市民図書館
【電話】261-1585

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